信州の秘境、阿南町・根羽村・平谷村・阿智村。武田氏終焉の悲劇と信仰が交差する歴史街道へ。
信州(長野県)の南部、愛知県や静岡県との県境に位置する根羽村、平谷村、阿智村、阿南町は、 豊かな自然に抱かれた静かな山里です。しかし、この地には戦国時代の英雄、武田信玄とその一族の 悲しい歴史が深く刻まれています。信玄の死後、跡を継いだ武田勝頼が織田・徳川連合軍に追われ、 一族滅亡の地となったのが山梨県の天目山田野。その悲劇の物語は、実はここ南信州へと続いて いたのです。

この旅では、歴史の裏側に光を当てながら、地元の人々に守り継がれてきた**「行人様」の信仰、 そして武田勝頼・信勝**の悲劇の終着点を巡る、特別な歴史ドライブへご案内します。ただ観光地を 巡るだけでなく、その土地に根付いた文化や人々の想いに触れることで、教科書では学べない深い感動を体験できるでしょう。
:この旅で得られる「特別な体験」
この歴史ドライブは、以下のような特別な体験を求めている方に特におすすめです。
- 歴史の追体験:地図を片手に、武田一族が辿った道を追体験することで、歴史の臨場感を肌で 感じられます。
- 信仰の深みに触れる:阿南町新野の新栄山に祀られる普段は公開されない行人様の御開帳に 立ち会い、地域に根ざした信仰の姿を間近に見ることができます。
- 知られざる史実:根羽村や阿智村浪合に伝わる、武田勝頼と武田信勝にまつわる知られざる史実と伝説に触れることができます。
武田氏終焉の地・天目山から続く悲劇のルート
武田氏滅亡の地として知られる天目山田野(山梨県)。しかし、その首級は織田信長の本陣があった 平谷村の近くまで運ばれたとされています。この旅は、武田氏滅亡の物語の「その先」を辿るものです。武田勝頼と嫡男の武田信勝の首は、織田軍による「首実検」のため、根羽村、そして阿智村浪合へと運ばれました。この道筋は、歴史上、武田氏の終焉により織田信長の天下統一へのプロセスとして 大きな意味を持つルートなのです。(*信玄公の最期の地に関しては諸説あり)
そもそも「行人様」って何?阿南町新野の信仰と歴史的背景
阿南町を語る上で欠かせないのが、この地に深く根付いた**「行人様」への信仰です。特に、 毎年秋に行われる御開帳は、地元の人々だけでなく遠方からも多くの参拝客が訪れる特別な行事と なっています。では、この行人様**とは一体何者なのでしょうか。
「行人様」(ぎょうにんさま)の正体:御開帳の歴史と信仰の深さ
行人様(ぎょうにんさま)とは、具体的には仏教における修行僧、即身仏(そくしんぶつ)を指し ます。行人様として祀られている方は、江戸時代に実在した南岸大和尚の一人弟子、
心宗行順大行者(久保田彦左衛門)と言い元は侍だったそうです。
行人様です。彼が即身仏となることを決意し、厳しい修行の末に自ら土中に埋まり入定(にゅうじょう)した場所が、現在の阿南町新野にあります。人々は彼の偉業を称え、行人様として崇拝するようになりました。普段は厳重に管理されていますが、春と秋の年2回、一般にそのお姿を拝むことができるのが御開帳なのです。

地元住民に愛される「行人様」の特別なエピソード
行人様は、地域にとって単なる歴史的な存在ではありません。地元では「行人様は私たちの生活を見守ってくれている」と信じられています。ある地元の方は、「子供の頃からお祭りのように御開帳を楽しみにしていました。行人様は、まるで町の守り神のような存在なんです」と語ります。このように、 行人様は世代を超えて語り継がれ、地域コミュニティを強く結びつける役割を担っているのです。

御開帳の期間、時間、アクセス方法
行人様の御開帳は、毎年敬老の日の前日と春4月に一般公開されます。年にニ度の特別な機会なので、 この時期に合わせて旅行計画を立てるのがおすすめです。


- 開催日:毎年4月と9月敬老の日前日
- 場所:阿南町新野(にいの) 瑞光院
- 時間:午前時〜午後3時(目安)
- アクセス:
- 中央自動車道・飯田山本ICより車で約1時間。
- 駐車場は臨時駐車場が設けられますが、混雑が予想されるため早めの到着がおすすめです。
<br> ※ 御開帳の日程や詳細は変更される可能性があります。必ず事前に公式情報をご確認ください。 [阿南町観光協会公式サイトへのリンクを想定]
悲劇の終着点—武田勝頼・信勝の首級と根羽村・浪合村を辿る
武田信玄の死後、甲斐武田家は衰退し、息子の武田勝頼が当主となります。武田軍が壊滅した天目山 から、勝頼と嫡男の武田信勝は自害し、その首級は織田信長の命により、遠く離れた信州へと運ばれ ました。その悲劇的な旅の終着点が、阿南町の隣に位置する根羽村と浪合村です。
根羽村:信玄塚に秘められた伝説と史実
根羽村にある**「信玄塚」は、武田信玄の墓所として広く知られています。しかし、この信玄塚は、 実は武田勝頼と武田信勝**の首級が晒された場所ではないか、という説も残されています。









地元では「織田信長が、武田氏の力が完全に滅んだことを示すため、あえて信玄の名を冠した塚で首級を晒した」という伝説が語り継がれています。真偽は定かではありませんが、この信玄塚が持つ歴史的背景は、多くの歴史ファンを惹きつけてやみません。
浪合村:武田勝頼・信勝の首実検の地—その衝撃的な歴史
信玄塚で晒された後、勝頼と信勝の首は、さらに浪合村へと運ばれました。ここでは、織田信長が本当に武田氏の首級であるかを確かめるため、「首実検」が行われたと記録されています。この悲痛な史実は、多くの歴史書には詳しく記されていませんが、地元には今もその記憶が残されています。





地元歴史家が語る「なぜこの地に首が?」
先に高遠城の攻略にかかっていた織田信忠の後から出陣して、高遠に向け軍を進める途中、阿智村の 浪合おいて天目山田野の地にて討たれた武田勝頼・信勝の首級が届き検分をされたと伝えらえてます。 武田信玄の時代からこの地域が甲斐武田氏にとって重要な拠点であり、その影響力を完全に排除する 必要がありました。信長は、武田氏に与していた地域の豪族や住民に、武田氏の終焉を徹底的に見せつけることで、自身の支配を確固たるものにしようとしたのです。」
パワースポット分杭峠を通る152号線と歴史の道—おすすめのルートと立ち寄りスポット
行人様の信仰と武田氏の悲劇を巡る旅は、歴史探訪だけでなく、南信州の美しい自然も満喫できるのが魅力です。ここでは、歴史と絶景を両方楽しめるおすすめのドライブコースをご紹介します。
【ルート1】武田氏ゆかりの地を巡る王道コース
歴史を深く知りたい方におすすめのコースです。
- スタート:中央自動車道・飯田山本IC
- ルート:飯田山本IC → 浪合村(武田勝頼・信勝の首実検の地) → 根羽村(信玄塚) → 阿南町 新野(行人様)
- 所要時間:約3時間(各スポットでの滞在時間を含まず)
【ルート2】分杭峠から糸魚川静岡構造線の神秘を体感するコース
美しい景観とパワースポットを巡りたい方におすすめです。
- スタート:和田宿
- ルート:和田宿 → 和田峠 → (諏訪)杖突峠 → 高遠 → 152号線 → 分杭峠→ 尾鹿村 → 松川町 (151号線) → 飯田 → 阿南町新野
- 所要時間:約6時間(各スポットでの滞在時間を含まず)
日本列島を縦断する大断層、糸魚川静岡構造線の真上に位置する分杭峠は、神秘的なパワースポットとして知られています。この道中では、日本中央分水嶺や険しい山々が織りなす絶景を堪能できます。
立ち寄りグルメ&お土産スポット
ドライブの疲れを癒してくれる、美味しい地元グルメやお土産も旅の醍醐味です。

道の駅 信州新野千石平ホームページ
https://sengokudaira.jp/- 「あなんねぎ」:阿南町特産の太くて甘みが強いねぎは、焼きねぎや天ぷらにすると絶品です。
- 五平餅:クルミを主原料とした秘伝のタレと阿南産の米を使用した名物の「大御弊餅」。 ぜひご堪能ください。

幣束御幣餅 道の駅信州千石平ホームページより転載
- 農産物直売所:新鮮な野菜や果物、手作りの味噌など、お土産に最適な品々が手に入ります。
阿南町・平谷村・阿智村信州南部の旅で知っておきたい 「おもてなし情報」
阿南町は、大都市から離れた穴場スポットです。旅行をより快適に、そして深く楽しむための おもてなし情報をまとめました。
旅を快適にするための事前準備
- 宿泊:阿南町には、温泉宿や民宿が点在しています。特に、秘湯として知られる温泉宿では、 日頃の疲れを癒すことができます。早めの予約がおすすめです。
- ガソリンスタンド:山間部では数が限られているため、こまめな給油を心がけましょう。
- 道の駅:休息に、地元の名産品等の買い物に、食事にと今や車での旅に欠かせない道の駅。 今の季節は秋のフルーツが充実しています。

旅の「シェア」につながるフォトジェニックな歴史スポット
- 信玄塚の石碑:苔むした石碑は、歴史の重みを感じさせるフォトスポットです。
- 行人様:御開帳の際は、行列ができるほどの賑わいです。その様子をSNSでシェアすれば、 多くの反響があるでしょう。
- 絶景の峠道:南信州の山道を走りながら、思わず息をのむような絶景に出会えます。
御開帳やイベントの「予約」「確認」の重要性
年に二度の御開帳は、非常に多くの人が訪れるため、公式サイトや観光協会のSNSなどで最新情報を 必ず確認してください。また、食事処や宿泊施設は、シーズン中は予約が必須となる場合が多いです。
【まとめ】歴史と自然を肌で感じる旅へ、次の一歩
この歴史ドライブは、武田信玄、武田勝頼、武田信勝という戦国武将たちの悲劇を辿りながら、阿南町に深く根ざした行人様の信仰に触れる、他に類を見ない特別な旅です。ただ美しい景色を眺めるだけでなく、その土地の物語や人々の想いを感じることで、心に深く刻まれる思い出となるでしょう。
次に読むべき関連記事
歴史好き必見!長野県内の「古戦場」巡りガイド
「武田信玄の隠し湯」として知られる信州の名湯特集